abさんごと島崎藤村 [abさんご]
家政婦という仕事。
強いて言うなら、家庭の主婦が毎日行っている作業が主な仕事でしょうか?
具体的には、料理、掃除、洗濯、買物、アイロン掛け等々。
物語に登場する、家事がかりの女性はそのどれもが不得手らしく(笑)
そのため、家はどんどん薄汚れ傷んでいったとありますから、家政婦としてはまあ失格だったんでしょう。
常識的に考えれば、そうなりますね。
なのに、どうして家計を任されるまでに父親からは信用されたんでしょう?
ましてやこの父親は、社会的地位も財力もありそうなどこかの大学教授らしい学究の徒で、家政婦など、気に入らなければいくらでも交代させられたはずですから。
なのに、どうしてそんな歪んだ立場の逆転がなされてしまったのか?
家事がかりへの父親の持っていたであろう弱みとは、一体なんだったのか?
これこそがabさんごの最大の謎であり、本来は物語を流れる裏テーマだったはずでしょう(笑)
ここで、この話を持ち出すのは、多少気が引けますが、、、
昔の小説家で、島崎藤村という人がいらっしゃいました。
教科書的には小説『夜明け前』の著者ということになります。
藤村には学校では教えてくれないこんなお話があります。
藤村の妻の死後、こま子という姪がお手伝いとして彼の家に来るのですが、
あろうことか、藤村はその姪に手をつけ妊娠させてしまいます。
その後彼はフランスへ逃亡。
帰国後に小説『新生』を発表しその顛末を懺悔しました。
余談ですが、芥川龍之介は、そんな藤村のことを偽善者と呼び唾棄しています。
こんな無関係な話を持ち出すと、気分が悪くなる方も多いでしょうが。
それも承知で、あえて書かせてもらいました。
物語の中で、なぜ『家事がかり』は人知れず父親から逃げ出そうとしたのか?
不思議なことに、その理由は全く描かれませんでした。
主人公により家出は阻止されてしまい、結局彼女の逃亡は叶いませんでした。
視点を変えてみれば、この父親と娘に会いさえしなければ、家事がかりの人生はきっと違ったものになっていたかもしれません。
叶わなかったaとbとに枝分かれした道。
彼女には、そのどちらがより不幸だったのでしょう?
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